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          正月さまと、いちまき

(臨済宗・徳隣寺・阿部浩岳


 新年、明けましておめでとうございます。

 随分暖かいお正月を、皆様方どの様にお迎えでしたか。

 さて、何気なく「お正月」と口にしましたが、「お正月」は、古来より仏教と神道に深く根ざした日本人の大切な風習であるのです。

 「お正月」とは、「正月さま」が各家にお戻りになる、それをお迎えする行事で「年神さま」とも呼ばれ、豊作をもたらす神様であると同時に、各家の「祖霊」即ち「先祖の霊」という側面もあります。

 因みに、江戸時代「お正月」は12月31日の夕暮れから始まり、31日の夕食が正月の正餐(正しいと言う字と、夕食を意味する晩餐などの餐)でした。

 時の経過と共に今では年越しそばになりましたが、本当は31日の晩に家族がみんな揃ってご馳走をいただくことが、正月の中心行事でした。

 明けて1月1日の朝食には、お雑煮をいただきます。

 このお雑煮は、「正月さま」をお迎えし12月31日の晩から神棚にお供えした、稲・米・塩・水等の食べ物やお酒、また鳥獣・魚介・果実などを下ろし、ごった煮にしたものでした。

 そのお箸は柳の枝で作られた両端が丸いもので、一方は「正月さま」がお使いになり、もう一方は人間が使う、「正月さま」と人間が一緒に食べることを意味しており、「正月さま」と人間がみんな一緒に食事をすることが、正月の行事で一番大事なこととされました。

 お雑煮はお餅が主役のように見えますが、実は霊魂の形をした里芋の方が大事で、それをいただくのは、祖先の魂(たましい)をいただくことだそうです。

 さて、お餅はと言うと、これが即ち「お年玉」、もともとは年の「たま」で「霊魂」を意味し、昔は一族郎党全てを統率していく本家の長たる「家長」が祖先の霊を搗き込んだ年玉を家族に配るものでした。

 最後に、昔の一族郎党の話から、お聴きの皆様にささやかな「お年玉」をご用意いたしました。

 年末に読みました中野翠著の『いちまき』即ち血族の一段をテーマとした本です。

 自分の御先祖様に思いを馳せて一読してみられては如何でしょう。




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