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ロシアの鳩
(浄土真宗 光源寺 三上照文)
その時、以前冬のロシアで見た鳩のことを私はふと思い出しました。ロシア人のガイドさんと一緒に市場に行った時、痩せた鳩たちがダンボールをつついていました。そして何か餌を見つけると、他のものを押しのけて餌に群がります。喧嘩を始める鳩もいます。ガイドさんが「どうしてこんな鳥を平和の象徴と呼ぶのですかね?」と言っていたのを印象的に覚えています。確かにその鳩たちは貪りの象徴と言ってもいいような姿でした。
しかし、考えてみますとかわいそうです。気温がマイナス20度30度にもなる冬のロシアで、飢えと寒さの中、鳩も必死で生き抜こうとしているのだと思います。もし私がロシアの鳩だったらどうでしょう?歎異抄の「さるべき業縁のもよほさば、いかなるふるまいひもすべし」という親鸞聖人のお言葉が思い出されます。
仏教画に描かれた貪りの象徴としての鳩は、決してロシアの鳩のことでも、他人事でもありません。貪りの心を生涯捨て去ることの出来ない私自身の姿なのです。
ナモアミダブツ。
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