トップ > ネット法話

このページは音声読み上げページです。下の[開始]ボタン(右矢印)を押すと、テキストの読み上げを開始します。[開始]ボタン(右矢印)が出ていない場合はここをクリックしてください。


娘の教え

曹洞宗・福昌院・上原大秀


 曹洞宗を開かれた道元禅師様がお詠みになった詩に「春は花 夏時鳥(ほととぎす) 秋は月 冬雪冴えて 涼しかりけり」という有名な詩があります。

 この世界のあらゆるものをありのままに受け止め、さらにそこに活路を見出す、禅の奥深い境地を感じさせる詩でありますが、私のような凡人にとっては春と秋はいいとしても、夏は暑くてやれんし、冬は寒くてたまらん、とつい思ってしまいますが、先日、二歳になる娘に、道元禅師様の詠まれた詩に通ずる禅の心を教えられるような出来事がありました。

 ある寒い日の朝、いつものように娘を保育園に連れて行くため、車に乗せて出発したのですが、寒い朝ですので、車内も寒く、暖房もすぐには効かず、私が娘に「寒いねー」と言うと娘もニコニコしながら「寒いねー」と答え、そんなやりとりを何回か繰り返して、何度目かに娘が「寒いねー気持ちいいねー」といったのです。

 まさに、道元禅師様の詩の「冬冴えて 涼しかりけり」の禅の心境を二歳の娘に教えられた出来事でした。

 私どもの教えの一つに、矛盾や常識に捕らわれていると、正しい物の見方が出来なくなる、という教えがありますが、私も、見事にそのたとえの通り、冬は寒いもの、夏は暑いもの、と常識的な考え方しか出来なくなっていることに気づかされて、反省させられました。

 なかなかこの、常識に凝り固まった頭をほぐしていくのは難しいことですが、禅の教えと、まだ常識に堅められていない娘の智慧を学びながら頭をほぐしていきたいと思います。




音声読み上げ機能については、日本アイ・ビー・エムの「ボイスらんど」のページ(http://www.ibm.com/jp/voiceland/)をご覧ください。