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    こころ安らぐ人

曹洞宗・大覚寺・末益泰輝


 先日、春一番が吹きました。季節は少しづつ春に向かっています。 皆さま如何お過ごしでしょうか。

 その人に会うと心が安らぐ、という経験は誰しもお持ちだと思います。

 何の警戒心を持つことも無く、自分自身を素直にさらけ出せる人、例えば、愛する家族や気のおけない友人、苦楽を共にした仲間、気心の知れた職場の同僚など、お1人お1人に様々な形があることでしょう。

 私自身も同様で、そのご本人のいつも変わらない心のこもった笑顔、言葉、心遣いに触れる時、とても満たされた気持ちになります。

 そして私はその人に会うと、いつも「和顔(わげん)愛語(あいご)」という言葉を連想させられるのです。

 有名な言葉ですから、ご存じの方も多いでしょう。

 この「和顔愛語」は「大無量寿経」というお経に出てくる言葉で、「和やかな表情と親愛の情がこもった言葉づかい」という

 意味になります。尚、お経では更に続けて「先意(せんい)承問(じょうもん)」と示されます。

 相手の気持ちをまず鑑みて問いただす、という意味だそうです。

 したがって、これらの教えからは、やわらかい微笑み、嘘や偽りの無い真心からの言葉、そして相手への深い思いやりの心を持って人と接することの大切さを伺うことができます。

 この言葉を会社の社訓としているところも多いと聞きます。

 しかしながら、この教えを常に実践することはなかなか容易なことではありません。

 「自分中心」のわがままな心やその時の気分に左右されて、ついつい顔の相も崩れ、言葉も乱れてしまいます。

 また、何かを目論んで「和顔愛語」を実践しても「安らぎ」は生まれません。 

 やわらかい笑顔も、情に満ちた言葉も、深い思いやりの心も、すべて何のはからいも無く自然に湧き出るからこそ、「安らぎ」が戴けるのではないでしょうか。

 出来ることなら、私自身も周りに「安らぎ」を届けられるような人間になりたいと思います。

 そして、この「和顔愛語」が広がって、もっともっと、思いやりに溢れた素晴らしい世の中になることを願わずにはおられません。




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