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          一茶と真宗

                                      (浄土真宗・光圓寺・阿武孝昭)


   「筍も 名乗るか 唯我独尊と」

かの有名な、江戸時代の俳人、小林一茶五七歳の時の俳句です。

一茶は、浄土真宗の信仰が篤く、親鸞の教えが根強い土地柄である信濃の柏原で中農の子として生まれ、小さい頃、母親を亡くし、三度の結婚、四人の子を幼くして失ったりして、波瀾万丈、逆境の中で六五歳の生涯を終えています。

一茶は一生のうちに二万作を越える俳句を作ったと言われております。中でも、

 痩せ蛙 まけるな一茶 是に有

 我と来て 遊べや親の ない雀

 雀の子 そこのけそこのけ 御馬が通る

などは、有名な俳句で、小さい動物まで目が行き届く、一茶のやさしさのようなものが伝わってきます。

さて 冒頭もうしました「唯我独尊」でありますが、お釈迦様がお生まれになったとき「七歩」歩まれ、『天上天下唯我独尊』と申された、と伝えられている言葉を引文したものです。

この言葉は、「天にも地にも、ただ我一人尊し」と言うことですが、勿論この世で自分が一番偉いと言うことではありません。

自分が、この世に生まれたことの尊さ、自分が地上に生まれ出たことを、自ら祝福されている喜びの声であります。

「人身受け難し、今すでに受く」という、その人身を受けており、人間に生まれてきた尊さ、計ることの出来ない、すばらしい、不思議な因縁で、今この世に生まれてきた私であるから、「自利即利他」つまり「私は世のため、人のためになる人間になる」そんな思いの宣言であると思います。

最後になりますが、小林一茶は親鸞の精神をくんだ句を他にもたくさん作っています。いくつかご紹介をして終わりたいと思います。

 涼しさや 弥陀成仏の 此のかたは

 年もはや 穴かしこ也 如来様

 ともかくも あなた任せの としの暮

 蝿一つ 打っては なむあみだ仏也

 春立つや 愚の上に又 愚にかえる

 山寺や 祖師のゆるしの 恋の猫

等々であります。

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