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          要らない土

曹洞宗・大覚寺・末益泰輝


 今年の春は天気が悪く、折角の桜もじっくり楽しむ間も無いまま散ってしまい少々残念なのですが、皆さまは如何でしたでしょうか?
 
 先日、ある集まりで山口市内のホテルに宿泊する機会がありました。

 受付時間まで少し時間がありましたので、フロントのそばのお土産物販売コーナーを見て回っておりますと、絵葉書を数種類売っていました。

私にとって絵葉書は、ちょっとした近況報告やご挨拶などに大変重宝しており、行く先々でつい色々と買ってしまうのですが、この度も例に漏れず10枚セットを3セット買い求めてしまいました。あの金子みすず氏の絵葉書です。
 
 明治36年(1903年)に現在の長門市に生まれ、大正12年から昭和3年にかけてのわずか数年間の間に500編を超える作品を発表し「若き童謡詩人の巨星」と称賛されながら、昭和5年(1930年)、26歳という若さでこの世を去ったとされています。
 
 さて、その絵葉書、裏面に愛らしい女の子の絵が描かれ、そこにみすず氏の色々な詩が添えられているといったものなのですが、ある1編の詩が何ともいえず心に響いたものですから、以下にご紹介申し上げます。

        「土」

 こっつんこっつん 打(ぶ)たれる土は  
 よい畑になって  よい麦生むよ。

 朝から晩まで   踏まれる土は     
 よい路になって  車を通すよ。

 打(ぶ)たれぬ土は 踏まれぬ土は  
 要らない土か。

 いえいえ それは
 名のない草の お宿をするよ。

 この世の中のものは全て何かの役割を持っている。一見何の役割も果たしてないようなものであっても、全て尊い命を宿している。私はそんな風に読みました。

 とても温かく、かつ仏教的な詩だと思うのですが、皆さまはどうお感じになりましたか?

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