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          火を吹き消す

曹洞宗・大覚寺・末益泰輝


 さて、今月はご存知のように仏教の開祖、お釈迦さまが亡くなられた月、すなわち「涅槃会」の月に当たります。

 この「涅槃」という言葉ですが、サンスクリット語で「ニルヴァーナ」といい、本来、「火の吹き消された状態」を示します。

 では、この「火」とはどのような「火」を表わすのでしょうか?

 これについて、第1には「煩悩の火」を、第2には「生命の火」を表わしているといわれます。

 第1の「煩悩の火」が吹き消された状態、これは心の中の煩悩がすべて消え鎮まった状態の安らぎを示し、さとりの境地であるといわれます。

 煩悩の根本である三つの毒、すなわち貪り、怒り、愚痴が止滅した状態です。

 第2の「生命の火」が吹き消された状態は、入滅、死去(亡くなる)を示します。

 肉体などの生存の制約から完全に離れた状態です。

 ちなみに「般涅槃(はつねはん)」は完全なる涅槃という意味で、特にお釈迦さまの入滅のことを「大般涅槃(だいはつねはん)」と呼んで区別いたします。

 これを踏まえまして、改めて「涅槃会」の意義を考えてみますと、法要やお参りによってお釈迦さまのご入滅を悼む日であると同時に、生きている私たちの身と心を点検する日であるといえましょう。

 仏教徒であるならば、特に第1の煩悩の火を吹き消すことに想いを致すことが大切なのではないでしょうか。

 生きていくためには当然、必要な欲や煩悩もありますが、余計に持ちすぎず、求めすぎず。

 上手に煩悩と付き合っていくことを再確認したいと思います。

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