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 読書

浄土宗・常念寺・野花祥生


昔読んだ本を、最近改めて読み直してみると、昔その本を読んだときよりも、作者の考え方や内容がよく分かったり、たとえば大人と子どもが登場する物語であれば、かつては子どもの立場で物語を体験していたのに、大人になってから読むと大人の立場から物語をとらえ直すことができ、同じ物語でも改めてそのおもしろさに気付くということがあります。

 また作者がその物語を書いた年齢に自分も近づいたときに初めて、その作者の考え方や作品の背景がよく理解できるようになる、そういう体験が皆さんにもあるのではないかと思います。

 私も最近、本で紹介されていたので、久しぶりに星新一さんの『ボッコちゃん』を読み直してみました。

 1冊の文庫本の中に50編の短編小説が収められており、一つの話を読むのに5分とかかりませんが、それぞれの話は笑えるオチがついたものや意外な結末が待っている話、宇宙を舞台にしたスケールの大きな話から日常のちょっとした不思議な話、ドキリとするような話であったりと、よくこんなにたくさんの話を作り出せたものだと思います。

 しかし実は作者の星新一さんは生涯に1001編のお話しを発表しておられます。

 ここに収録の50編はそのほんの一部に過ぎません。
 
 それらの話には、いいところも悪いところも含め人間のいろんな側面を垣間見ることもできますが、決して教訓めいたものではありません。

 しかしその中の一編、「おーい、でてこーい」という話などは、今年春の東日本大震災と福島原発の事故の起こる前と後では、読んだ後の感じ方が大きく変わった話ではないかと思います。

 社会の変化によっても一つの物語のとらえ方は大きく変わってしまうものです。

 『ボッコちゃん』が出版されたのは星新一さんが40代半ばの頃です。

 私ももう数年たって同じくらいの年齢になったときに、読み直してみると作者の年齢に近づいた分、作者の考え方により近づけたり、そのときの社会の変化によってまた違った面白さを感じることが出来るのではないかと思います。

 皆さまも昔読んだ本を改めて読み直してみると、その時々の自分自身の心境の変化に気付くことがあるのではないかと思います。




音声読み上げ機能については、日本アイ・ビー・エムの「ボイスらんど」のページ(http://www.ibm.com/jp/voiceland/)をご覧ください。