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          にらめっこの達磨さん

曹洞宗・大応寺副・松原正浩


 お盆も過ぎ朝晩涼しくなってきましたが、みなさん風邪などひいていませんか?季節の変わり目はなにかと体調を崩しやすいものですから、お互いに気をつけましょう。

 ところで皆さんは、達磨さんを知っていますか?おそらく大抵の人は「あ〜、赤くて選挙のときに目を入れるあれでしょ。」と答えるのではないでしょうか。

確かにそのとおりですが、実はお釈迦様から数えて28代目のお坊さんなのです。それに生まれは南インドのある王国の王子でしたが出家し、さらに仏教を中国に伝えるために海を渡ったと言われています。

 達磨さんが渡った先は梁という国でした。その梁の初代皇帝武帝という人は大変仏教を保護した人でしたが、ある日達磨さんにこう質問しました。

「私は今まで仏教を保護し、様々な良いことをしてきましたが、これに対してどんな功徳があるでしょうか?」

この質問に対し達磨さんは「無功徳」と答えたそうです。なぜ達磨さんは「無功徳」と答えたのでしょうか?

確かに武帝は仏教を保護し、様々な良いことをしてきました。しかし、武帝は今までしてきたことに対して、なにか見返りはないだろうかと考えていたのです。それで達磨さんは、見返りを求める心では何をしても功徳は無いよと答えたのです。

 選挙では最初に達磨さんの片目を入れ、当選後にもう片目を入れる風景が必ずと言っていいほど見られますが、こうしてみると大変失礼なことだと思います。当選という見返りを求めてのことでしょうが、無功徳と答えた達磨さんが果たしてそれに応えてくれるでしょうか。

私たちはついつい見返りを求めて行動してしまいがちですが、そうしたことを忘れ、ただ一生懸命に毎日を過ごし、今ある自分をご先祖様に感謝する、こうした心が今の世の中には必要ではないのでしょうか。

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