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          近くで、遠くの物を食べる

臨済宗・徳隣寺・阿部浩岳


例年にも増して暑い日が続いておりますが、水分をしっかり摂られて、熱中症に成らないようにくれぐれもご注意下さい。

さて、四十年くらい前の夏を考えてみますと。朝のうちはもう少し涼しく、おまけに夕立もあり今よりも随分過ごし易かった気がします。この季節は食欲がなくなりがちですが、本日は「近くで、遠くの物を食べる」という謎々のようなお話しをさせていただきます。

近年、スローフードという言葉を耳にされた方もおいでと思いますが、これは文字通り、世界中で同じ食べ物・飲み物が待たずに供給されるファーストフードの対極の概念です。

スローフードとは、イタリアのある小さな町で始まった運動で、その町の人はゆっくりと食事をし、よそから来た人には「食材は正体の分かるものを使っています。食事が出てくるのが遅いかもしれませんが、それでも良ければどうぞ」と言うそうです。

発酵食品の権威・東京農大の小泉武夫教授は、「食事における主食は、本来保守的でなければならない。それを日本では急に肉や脂肪を大量に摂り、野菜が少ない食事に変わってしまったから、生活習慣病とか『キレる』ことにつながる。本来の和食に戻れ」と持論を展開しておられますが、先ほどの「近くで、遠くの物を食べる」と言う言葉は、自分が住んでいる地域で採れた物がその地域で暮らす人の食べ物として最も適しており、更に、ほ乳類である人間から考えて、遠くに位置する食べ物−野菜や果物などの植物−が食材として適していると言うことです。

皆様には畑で出来た作物、土や水や太陽の恵みを頂いた作物に感謝し、ゆっくりをよく噛んで五感で味わうことをもう一度見直し、更に世代を越えた知識の伝承として、古来から伝わるその土地に適した料理法も後世に伝えて頂きたいと思います。
 

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