萩地方の仏事マナー


目    次


葬 儀 の 意 味

死が確認されたら
 危   篤
 死亡の連絡
 法的手続き
 喪   主
 葬 儀 社
 葬儀の日取り
 死亡通知状の発送


遺 体 の 取 扱 い
 末期 の水
 湯   灌
 経 椎 子
 北   枕
 枕   飾
 神棚と仏壇
 忌 中 札
 枕   経
 納   棺
 通   夜

葬 儀 の 当 日
 出   棺
 喪主の挨拶
 焼香の順序
 焼香の仕方
 会葬のマナー
 香    典
   お  斎 
 中陰供養
 中 陰 壇
 忌 明 け
 中陰以外の法要
 
仏壇 のまつり方


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葬儀の意味

 肉親の死ほど悲しいものはありません。しかし、この世に「生」を受けた者は、同時に「死」をも引き受けなければなりません。「生者必滅、会者定離」(しょうじゃひつめつ えしゃじょうり)は永遠の真理であります。葬儀はそうした「死」を嘆き悲しむだけでなく、乗り越えるために営まれるものであります。
 葬儀とは葬送儀礼の略で、故人を永遠の世界に送る人生のうちで最も重要な儀式であります。



死が確認されたら

危篤
 医師から危篤状態を告げられたときには、家族の者は悲しみのなかにも、近親者に危篤の通知を出し集まってもらわなくてはなりません。また、危篤におちいった本人が何か言いたげなときには枕元にいる人は書き留める用意をすることか必要です。

死亡の連絡 
 医師によって死亡が確認されると、改めて近親者に連絡すると同時に菩提寺(先祖の供養をお願いしているお寺)に連絡します。たとえ菩提寺が遠く離れていても、まず連絡をとり指示をあおぎます。菩提寺が遠地で最寄のお寺に葬儀を依頼する場合、どのお寺さんにお願いするかということも菩提寺と相談するとよいでしょう。この場合も、戒名は菩提寺住職に授けてもらいます。故人の生前の様子を詳しく話して、故人にふさわしい戒名を授けてもらいましょう。
 葬儀社への連絡も急いでします。一般会葬者への連絡は、葬儀の日取り等が決定してから行います。なお、葬儀の日取り等については、菩提寺の都合を聞いてから決めることになります。枕経が終わったあとで菩提寺の住職と相談するとよいでしょう。

法的手続き
 
 死亡届・死亡診断書は死後ただちに(日曜祝日の区別なく)死亡した場所の役所等に提出します。死亡した場所が故人の居住地以外であれば二通作成し、居住地の役所等にも提出します。
 死亡診断書は臨終に立ち会った医師に作成してもらい、そ
の医師の署名捺印が必要です。死亡診断書がないと、その後の火葬(埋葬)許可証の下付をうけられないことになりますので注意が必要です。

喪主 
 喪主は故人の後継者になる者、即ち故人の祭祀を責任をもって行う者がなることが適当です。

葬儀社 
 最近では一般に葬儀社に頼んで葬儀を行うのが通例となりました。その場合、どこまで葬儀社に任せるかの確認を取っておく必要があります。今日では、棺の用意や、祭壇の飾りつけだけでなく、死亡届から火葬場の手続き、霊柩車・会葬者用マイクロバスの手配、祭壇の写真・死亡通知の手配など、あらゆる世話をしてくれる傾向にありますから、何を依頼し、何が余分かを確認しておく必要かあるでしょう。

葬儀の日取り 
 日取りを決める前に確認しておくことは、死後24時間を経過しないと火葬できないということ、遠方の近親者がやってこれるまでの時間、友引の日は避けるのが普通であること(ほとんどの火葬場は友引の日が休日)、そして菩提寺の都合を聞いてから日取りを決めるということです。

死亡通知状の発送 
 菩提寺との相談の上で葬儀の日取りが決定したら、すぐに死亡通知状を発送します。見本は葬儀社がもっています。遠方の場合は電報・電話にかえます。故人の交際範囲によっては新聞の死亡広告を利用します。手続きは葬儀社に依頼するか、広告代理店に申し込みます。


遺体の取り扱い

末期の水 
 死亡直後の死者の口に捧げる水を末期の水といいます。箸の先に脱脂綿をまいて白い糸で縛り、水を含ませて軽く唇をうるおすのが普通です。起源については、釈尊が入滅(亡くなられること)の直前に水を求められ、これを鬼神が捧げたてまつったとする故事によるとされています。

湯灌 
 遺体を棺に納める前に、湯水で拭くことを湯灌といいます。そして汚れものが出ないように、耳、鼻、肛門などに脱脂綿をつめます。このあと、目と口を閉じ、姿勢を整え、男なら髭を剃り、女ならば薄化粧をします。使い終わった湯は、穴を掘って捨てるなどします。

経帷子 
 経帷子とは、僧の姿になぞらえて、白木綿に経文を記した着物をいいますが、今日ではあまりこれを用いず、故人が生前好んでいた季節の着物を左前に着せるのが普通に行われているようです。

北枕 
 遺体はすぐに棺に納めず、仏間か座敷に安置し、親戚縁者に死の確認をしてもらい、別離の名残を惜しみます。顔には白布をかけ、両手を胸のあたりで合掌させ、手に数珠を持たせて寝かせておきます。この寝かせ方は北枕にします。北枕の習俗は、釈尊が入滅を前にして一番涼しい北に頭を向けられて横になられたことにもとづきます。部屋の位置関係でどうしても北枕にできない時は止むを得ないでしょう。

枕飾り
 
 故人を北枕に寝かせましたら、枕辺に枕飾りをします。白い布を掛けた小さな机の上に、香炉、燭台、花立て(樒を一本さします)、浄水(コップに水)、一膳飯(箸を立てます)、枕団子(六ないし七個)、四華などを供えます。
                     
神棚と仏壇 
 死の忌の穢れを防ぐために、家の神棚に白紙を貼ることが多く見受けられます。これらを取り除くのは四十九日の忌明けに行います。仏壇も同様に閉じておかないといけないとする地方もありますが、これは明らかに迷信です。仏壇は礼拝の対象であるご本尊様をお祀りしていますので、いつでも扉を開けておくべきです。ただ、祭壇をしつらえる関係で止むを得ず閉じる場合もあります。この場合は、祭壇にご本尊様が祀られますので仏壇を兼ねると心得ればよいでしょう。

忌中札
 
 死忌の穢れや死霊のわざわいを他に及ばさぬよう広く知らせるという目的で、「忌中」と書いた紙を貼る習俗があります。これは葬儀社が用意してくれます。これを取り除くのも忌明けに行います。

枕経 
 準備が整ったら菩提寺に頼んで枕経を読んでもらいます。枕経のあと、故人の人柄・職業・業績などを伝えて、故人にふさわしい戒名を授けてもらえるようにします。又、生前に授戒会等で故人が戒名を授かっている場合にはその旨を申し出なければなりませんので注意が必要です。葬儀の日取りの相談も、この時にするとよいでしょう。

納棺 
 枕経がすんだら遺体を納棺します。棺には故人の愛用の品を一緒に納めますが、火葬という関係から不燃物は控えるようにします。

通夜 
 昔は夜を徹してお経を読み、死者に変わりがないように棺のかたわらで遺体を守ったとされます。今日では葬儀の前の晩のお逮夜(たいや)に時間を決めてお経を読み、弔問の人々にも焼香してもらいます。


葬儀の当日

 萩地方では、一般に葬儀の順序が他の地方と異なる点があります。本来の葬儀の順序では、火葬は最後に行われるのですが、萩地方では葬儀の当日、先ず火葬から葬儀の式次第が始まります。恐らく、葬儀終了後、初度法事に引き続きお斎(会食)という流れをスムーズに行うためだと思われます。

出棺 
 出棺に先立ち、お経を読み最近親者から順番に焼香をして最後のお別れをします。棺の上蓋をはずし、喪主以下近親者の一人ひとりによって遺体のまわりに花がそえられます。棺を出すときは、できるだけ玄関口から出さず、縁側や茶の間から、足の方を先にして運び出します。又、故人が生前使っていた茶碗を割ったり、炬火を燃したりする習俗もあります。

喪主の挨拶
 
 萩地方では、喪主の挨拶は葬儀の最初に行われる場合が多いようです。挨拶の一例を示してみましょう。
  「本日はご多用にもかかわりませず、故○○のためにわざわざ御会葬たまわり、まことにありがとうこざいま  す。故人も今は仏のみ許にあって皆様方のご厚情に感謝していることと存じます。故人生前中は一方ならず  ご厚誼にあずかり厚く御礼申し上げます。(ここで故人の生前の様子を述べる)
   残された私ども家族は、まだまだ経験も浅く未熟な者ばかりでございます。どうか故人にかわりませず御好  誼と御指導をたまわりますよう、いくえにもお願い申し上げ、簡単ではございますが、これをもちまして御礼の  ことばとさせていただきます。本日はまことにありがとうございました。」

焼香の順序
 葬儀における焼香は血縁の濃い順に行うのが原則です。一番先に焼香するのは後継者となる喪主であります。この場合、後継者としての披露の機能も持つことになります。

焼香の仕方 
 焼香とは、敬虔な心を捧げるという行為であります。したがって恭しく行わなければなりません。各宗派によって仕方が異なるようですが、一例を示しますと、右手で香を軽くつまみ、左手をそえるようにして額のところまで香をいただき、ゆっくり火中に薫じます。次に香をいただかずにそのまま火中に薫じます。この場合、焼香は2回となりますが、沢山の人々が焼香されるような場合は、最初の1回だけで済ませます。線香については、通常は一本だけ立てます。

会葬のマナー
 
 葬儀に参列することを会葬といいます。会葬者の服装はできうるならば正式な喪服がのぞましいでしょう。それに数珠を持参します。会葬者は早めに受付に行き、「このたびは突然、訃報に接し…」とお悔やみを述べて香典を先方に向けて差し出します。通夜のとき香典をすでに出してあれば、会葬者記帳簿に記入するだけでよいのです。香典の書式は「御霊前」が一般的のようですが、「御香典」ないし「御香資」と書いて、故人への供養を依頼する気持ちで差し出せばよいでしょう。
特に萩地方の会葬者が注意しなければならないことは、自分の焼香が終わると葬儀が終わったような気持ちになり、隣の人と話を始めることです。葬儀が全て修了するまでは、故人並びに遺族に対する礼儀からも私語は慎みたいものです。

香奠 
 香奠とは、故人の霊前に捧げ供える物品(香)をいいますが、今日では、香資・香典の意味に使われています。「奠」とは「すすめる」という意味で、香奠は香を供えること、ないしは香を薫じて供えることを意味します。
 一方、香資・香典は香を買う代金として差し出されるものを意味します。したがって、「御香典」などは、これで香を買って供えてください、という気持ちで遺族にあてたものですから、向きをひっくり返さず、こちら向きで前机などに置くとよいでしょう。
 次に葬儀・法要での表書きの例を示してみましょう。
御香典(おこうでん)=霊前に香を買って供えてくださいという意味で用いる。
御香資(ごこうし)=「御香典」に同じ。
御香奠(おこうでん)=「御香典」と同様に使う。
御霊前(ごれいぜん)=霊前に供える金品に使う。(満中陰まで)
御仏前(ごぶつぜん)=満中陰を過ぎた法事などの場合に使う。
御供(おそなえ)=霊前などに供える花や菓子、果物などに使う。
御供物料(おくもつりょう)=「御供」の代わりに供える金包に使う。
御香華料(おこうげりょう)=霊前に香や花の代わりに供える金包に使う。
志(こころざし)=通夜・葬儀の世話役などへの御礼に使う。
御布施(おふせ)=お寺さんへのお礼の金包に使う。
御斎料(おときりょう)=お寺さんが会食を辞したときに渡す金包に使う。
御膳料(おぜんりょう)=「御斎料」と同様に使う。
御車代(おくるまだい)=お寺さんへの車代として渡す金包に使う。
御席料〔おせきりょう)=葬儀の場を借りたお寺などへのお礼に使う。

お斎(とき) 
 葬儀に引き続き開蓮忌供養(初度法事)が営まれます。読経中にもう一度焼香し、すペての儀式が修了しますと、お斎(会食)の席に移ります。このときの席順は焼香のときの順番(葬儀中の席順)とは異なり、喪主並びに遺族は下座につきます。そして、喪主は無事に葬儀が済んだことに対するお礼の挨拶をします。焼香順とお斎の席順の相異は普通の法事の時でも同様です。

中陰供養
 古来インドでは、「輪廻転生」(地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天人の六道を生まれ変わり死に変わりすること)の考えがゆきわたっていました。そして、この世の生を終えて次の生を享けるまでの期間が四十九日間あるとされ、この間を「中有」あるいは「中陰」と呼んだのです。したがって中陰供養とはこの間の供養をいうわけです。インドでは次の生が六道のうちのよりよい生であることを願って中陰供養がなされたことと思いますが、わたしたち日本人にとっては、宗派的な教義を別にすれば、故人が中陰を脱して、無事に御先祖様のお仲間入りをされることを願ってなされると考えるべきかと思います。中陰供養は、死後より四十九日まで七日ごとに七回の供養を行うのですが、中陰の繰り方は地方によって異なり、関西では各七日目の前日のお逮夜(たいや)に営みます。各七日は、初七日(しょなのか)、二七日(ふたなのか)、三七日(みなのか)、四七日(よなのか)、五七日(いつなのか、三十五日)、六七日(むなのか)、七七日(なななのか、四十九日、満中陰)と呼びます。

中陰壇 
 萩地方では、多くの場合、通夜の段階から葬儀社に頼んで自宅に祭壇が祀られます。この祭壇は初七日まで祀られます。初七日が過ぎますと葬儀社によって祭壇は片づけられ、かわって段ポール製の中陰壇が祀られます。この中陰壇は四十九日の忌明けまで祀ります。

忌明け 
 四十九日は満中陰で、忌明けといいます。忌明けとは、忌み籠りしていた遺族が日常生活に復帰する日という意味です。この日には、四十九日の法要を営みますが、萩地方ではこれを繰り上げて三十五日に営む場合もあります。葬儀から四十九日までの位牌は白木の位牌ですが、忌明けに中陰壇を片づけると同事に位牌も先祖代々の位牌(たとえば漆塗の位牌)に移します。そして、白木の位牌は菩提寺に返します。そのために、忌明けまでに、御先祖様として祀る位牌を用意しておく必要があります。納骨は一般に忌明けまでに行います。また神棚に貼った白紙や忌中札も忌明けの日に取り除きます。香典返しも四十九日あるいは三十五日に行われることが多いようです。

中陰以外の法要
 主な法要に、命日から数えて百日目の「百ヶ日法要」、亡くなってから一年目の命日が「一周忌」、亡くなった年
を数えて三年目が「三回忌」、以下「七回忌」、「十三回忌」、「十七回忌」、「二十五回忌」、「三十三回忌」、と続き、「五十回忌」で一般的には終わりです。これらを年回法要といいます。また一年に一度の月も日も一致した命日を祥月命日といい、毎月めぐってくるいわゆる命日を月忌ともいいます。丁寧なご家庭では、祥月命日はもとより、毎月の月忌にも菩提寺に読経を依頼されます。
 亡き両親を思い、遠く先祖をしのんで追善供養を営むということは、今日の自分をあらしめて下さった御先祖様に対し、感謝の「まごころ」を捧げることであるといえましょう。

仏壇のまつり方

 仏壇は仏様(御本尊様)をおまつりする祭壇でありますから「仏壇」というのであります。皆様方のご先祖様のお位牌もおまつりしますが、仏様(御本尊様)をおまつりするのが主であります。その両脇にご先祖様のお位牌をおまつりいたします。
 次にお供えですが、まず、お茶やお水をお供えする茶湯器を中段中央に、ご飯を供える仏飯器を向かって右に配します。お菓子や果物などをお供えする高坏(たかつき)は、さらにその左右に配します。下段中央には香炉、右に灯明(智慧を表します)を立て、左に花(慈悲を表します)を配します。これらを三具足(みつぐそく)といいます。香炉は三本足になっておりますので、正面前(こちら側)に一本足がくるようにします。また、経机に木魚やリンを用意し、お命日にはお霊供膳をお供えし、特に心をこめておまつりするようにしたいものです。お霊供膳をお供えする時は、仏様に食ペていただけるような向きにしてお供えします。お花などは仏様をお飾り申し上げるのですから、こちら向きになります。要は、お供えするものは仏様の方に、お飾りするものはこちら向きにということでしょう。「御香典」などは、既に述べましたようにこれで香を買って供えて下さいという気持ちで遺族にあてたと理解すべきですから、こちら向きで前机などに置くのがよいでしょう。その他不明な点は菩提寺に尋ねるようにいたしましょう。